左右

ワンキル

袖に隠した、ちょっとした傷を誰も知らない

袖に隠した、見え隠れする傷を本当に見たいのは多分自分だった。

袖をめくれば皮膚の固まった汚い傷は疼きそれ自体が脈を打つ。

 

まるでリズム隊の音がヘヴィーなロックだったもので、逆に初期の曲の繊細さは際立ったし近年のタフさも胸に残った。残響が耳に残って眠れず、鼓膜が久々に身体ごと振動したものだから少し気持ちが悪くなった。

オープニングアクトの演奏は、苦しんでいる陰鬱な音だった。轟音でそれをめちゃくちゃに破壊してて、それがとにかく苦しかった、ノリ方が変でそっちのほうが気になった。厚い雲の隙間から射す光はほんの一瞬だけ。

演者と一緒にトランスするの気持ちいいなんかもう途中色んなことどうでもよくてグラグラしてたから後ろのおばさんに迷惑かけたかもしれない。

渡ってはいけない

夢の中で、何度も何度も通ってきた小中の廊下の混ざった景色が出てくることがある。その風景に入り込んでいる時は夢の中の実体と自分自身の意識がごく近い。(だからめちゃくちゃ不快感がある)そこの廊下はまるで迷路のようになっている、歩いても歩いても同じ所へ辿り着いてしまい、ぐるぐるぐるぐると繰り返す、焦り、走る自分を止めることは出来なくて、でもわたしは知っていた、このままこれを繰り返すと夢を見ている自分自身がものすごく息苦しくなることを。だめ、戻らなければと言っているうちに金縛りのような事になったり、大量の汗をかいて、その廊下の不快な残像に黒いため息を吐いて目覚める。

夢の中には決して渡ってはいけない廊下がある。薄暗くて、汚い理科実験室のある廊下、窓がひとつしかなくて、たしかあの階段を降りて似たような廊下をまた右に曲がりトイレの前を通り過ぎて左手の階段から降りると急に外階段へ繋がる。そこから先の世界はボロボロの汚い世界だったり、汚いトイレで用を足して目が覚めるなんてこともあった。外階段へでられればまだいいんだけど、そうならないことの方が多い。

新しくできた校舎へ急に出てしまい、下駄箱から左へ曲がり職員室、校長室を通り過ぎ、三年生と六年生のいる教室の前を歩いてトイレや自分の教室の前を歩くとあの最悪な廊下の前へ、出る。それでもわたしは歩き続ける事になる。止まるともっとろくでもない事になる予感が常にあるから、次のシーンさえ予測できるのにわたしはそこから抜け出すことができない。

「手、冷たい」握った感触、見た目よりも細くて驚いた。「さきちゃんの手、小さいね」嘘、そっちのほうが小さい。秋の草むら、虫の声、「すこしうるさいな」「そうだね」「なにかおかしい?」「ううん」「へんなの」「楽しいの」

喪失

海、うみ、広く、怖い海、海に、投げ出された感覚、が、剥がれた。像、全てが、剥がれ落ちて、影、影の本物は鼻息で、飛んでった思い込み、飲み込み、消化されず、自分らしきそれ、如何にもなツラ、それ面した顔、覗く腹から、見て見ぬ振り、出来たはずは虚、受け付け無い人間、如何にもな顔して今更、自分だと名乗り出る。お人形、お人形は好きだった、好き、それは欠陥などないしな。真逆の好き、それそれ、拾って顔に貼り付けまくって安心安心、わたしの安心、喪失の喪、喪に服す服なんか持っていないから、ああ貰ったワンピースあります、真っ黒でさ