手で摘んだから千切れたのかも知れなかった
あの人の右手は、わたしの左手によって取れてしまった。
少しだけ痛かったみたいだけど、そもそも、感じることを止めたようだ
わたしが止めさせたのかもしれない。
◯という呪いをよくわからないままにばら撒いて
綺麗な音楽が鳴りやまなかった
机に覆った雑草はうつくしく、波のように膨らんだ。
明日の花には、下品で大きなタンポポの、黄色い花弁がついてるだろう
その洗剤と混ざった汗の臭いを、わたしはずっと忘れられない。
4度目の夏が来ようとしている。
菜の花を踏みしめ歩く事が出来なかった春を、左手で握り潰したのはわたしだった。
千切れたのは春で、きみの左手ではなかった
頭を空っぽにして、感じるのは左胸の鼓動だけで、そこから膨張した耳へ静かに、届く、届く。
そっと、とどく